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深い森の奥。古いお城が建っていました。
その城には、 どんな悩みにも答えてくれる
「魔法の鏡」が掛けられた部屋があり
世界中から、様々な人が「魔法の鏡」
のもとへ相談に訪れるのでした。
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さあ。では、実習をしていきましょうね。
実習って、一体何をするんですか?
まぁ、簡単なイメージワークね。
誰でもいいから、一人、許したい人を選んでもらえるかしら?
許したい人?…ごめんなさい。
私、まだお義母様を許そうという気持ちにはなれないんです。
別に、お義母様を許さなくても構わないわ。何もそんなハードルの高い所から行かなくても。もっと、簡単に許せる相手からでいいのよ。
簡単に許せる相手?
そう。お父様でも、お母様でも、なんだったら、あの猫でも。
お父様?私、お父様に対して許せないなんていう気持ちは持っていません。
そうかしら?
はい。お父様は、とても優しくて、いつも私を愛してくれました。
そうね。
私もお父様のことを心から愛しています。
ええ。分かってるわ。だからこそ、許せないのでは?
え?
お父様、どうして私を残して死んでしまったの?
どうして私を一人ぼっちにしたの?
どうして、あんな人と結婚したの?
私と二人では、ダメだったの?
どうして…
シンデレラは、突然泣き崩れました。
心の奥底で押さえ込んでいた、父への怒りに気が付いたのです。
父が自分を残して死んだこと…
あんな継母と結婚したこと…
私は父と二人で十分幸せだったのに…楽しかったのに…
父にとっては、そうではなかったのだ…
私では、父を幸せにできなかったのだ…
私、その怒りをずっと見ないようにしてきました。
だって、その事を認めたら、お父様を責めてしまう。
あんなに素晴らしいお父様なのに…
娘の幸せを、ただただ願ってくれた人なのに…
その人を責めるなんて…そんな事…そんな事…
あなたは、自分ではお父様を幸せにできないと思ってしまった。そして、父すら幸せにできない自分には、何の価値もないと思い、同時に、心の奥で父を責め続けている自分に罪悪感を感じていた。
…はい。
苦しかったわね。
…(涙)
さぁ、もうそんな苦しみとはお別れしていきましょう。あなたとお父様が幸せになるために、勇気を出してチャレンジしてもらえるかしら?
はい。お願いします。
さぁ、目をつむって、ふか〜く息を吸って…吐いて…
スゥーーーハァーーーーーー
お父様がしてくれた事で嬉しかったことを5つ思い浮かべてみて下さい。
どんな小さな事でも。どんな昔のことでも。
お父様がしてくれた事を思い出してみましょう。
もしかしたら、お父様に対して、様々な感情が溢れ出してきているかもしれません。
怒り、悲しみ、憎しみ、恨み、寂しさ、惨めさ、不安、恐れ…
どんな感情が湧いてきても構いません。ただ、それを感じてみましょう。
その感情を感じながら、お父様との間の出来事を思い出してみて下さい。
そして、今、湧き上がってきた嬉しかった出来事の一つ一つに、ありがとうと感謝の言葉を添えて、お父様に伝えてみて下さい。
一緒に遊んでくれて嬉しかた。どうもありがとう。
馬に乗せてくれて嬉しかった。どうもありがとう。
私とお母様に、ドレスを作ってくれて嬉しかった。どうもありがとう。
お母様が亡くなった後、私が寂しくないように、いつも側にいてくれて嬉しかった。どうもありがとう。
女の子には母親が必要だろうと、お義母様と結婚し、姉妹を作ってくれて嬉しかった。どうもありがとう。
最後の感謝を伝えた時、シンデレラの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちました。
父が結婚したのは、シンデレラと二人の生活が大変だったからではなく、シンデレラに母と姉とをプレゼントするためだったと気が付いたのです。
シンデレラは、父の大きな愛情を感じ、ただただ癒しの涙を流し続けました。
プリンセス。お父様は、あなたを心の底から愛し、あなたの幸せだけを願っていたくれたようね。
はい。
さぁ、今度はあなたの番ですよ。お父様の幸せを心から祈ってあげてもらえるかしら?
はい。お父様、ありがとうございます。幸せになって下さい。
お父様は、どんな表情をして言えるかしら?
少し複雑な顔をしています。
それはなぜ?
なぜかしら・・・私が笑っていないから・・・?
そう。では、お父様が幸せになるためには、どうしたらいいのかしら?
私が、幸せになること。
あなたが、心から幸せになた時、お父様はどんな顔をしている?
泣いています。嬉し泣き。私が幸せになった事を、心から喜んでくれています。
お父様は、あなたになんて言っている?
お前の幸せが、自分の幸せだ、と。
あなたには、大切な人を幸せにする力があります。
あなたが幸せになることで、泣いて喜んでくれる人がいるのです。
あなたは無力じゃない。
あなたは、愛する人を幸せにできる。
そんなかけがえのない存在なのです。
後は、あなたがそれを信じるだけ。
お父様、本当にありがとうございます。
さぁ、お父様の愛情をたっぷり感じたら、ゆっく〜り、自分のペースで目を開けて。
シンデレラの頬を、癒しの涙がつたっていました。
その表情はキラキラと輝き、古ぼけた洋服も、化粧っ気のない素顔も、すべてが吹き飛ぶような美しさを放っていました。
プリンセス、あなたは、お父様の喜び。お父様の希望。
あなたが幸せになる事こそが、お父様の幸せなのよ。
はい。やっと心から理解できたような気がします。
みんなを幸せにするために、王子様のもとへお行きなさい。
そのガラスの靴は、自分のものだと伝えるのよ。
さぁ、早く。
はい。ありがとうございました。
幸せになるんですよ!
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ボーーーン、ボーーーン、ボーーーン
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これまで、たくさんの
我慢と努力をしてきたシンデレラ。
やっと王子様と結ばれることができました。
心から幸せを願います。
シンデレラのパートナーシップは
終わりではなく
ここからが始まりです。
きっと、また魔法の鏡に
相談するために
このお城を訪れることでしょう。
パートナーシップは、
永遠のテーマでもありますからね。
シンデレラがまた訪れるその日まで
to be continue…